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小豆と話す和菓子職人。至高のつぶ餡が作り出した最中「茂ちぎく」(兵庫県西宮市)

今回は、兵庫県の西宮市にある和菓子屋、菓一條 栄久堂吉宗(かいちじょう えいきゅうどうよしむね)の吉川代表にお話をうかがいました。和菓子の将来に抱く危機感や、最中の形を変更した意外な理由について教えてくれました。

掲載日:2017-05-29

インタビューに答えてくれた方
菓一條栄久堂吉宗 / 代表 吉川壮一さん
昭和62年~平成3年:関西にて2件の和菓子屋で和菓子職人の修行をする
平成3年~平成10年:菓一條栄久堂吉宗(夙川)にて父の上生菓子技術を学び独自の餡焚きを研究
平成10年~平成13年:菓一條栄久堂吉宗 尼崎店にて独立
平成13年~平成27年:菓一條栄久堂吉宗(夙川)に戻り、材料に拘り製法に拘った和菓子作り一番に考え、若い和菓子職人育成をする
平成27年:株式会社 菓一條 設立
平成27年~現在:拘りの和菓子製造販売、和菓子職人育成日本の伝統で有る和菓子を知って貰う為に様々な活動をしている

和菓子職人になられたきっかけを教えてください。

私は勉強が嫌いで、高校を卒業しても何をするか決まっていなかったんですよ。そんなとき、和菓子職人だった父に「和菓子の修行をしてこい」と言われまして。それで行ってみたら、なんかハマっちゃったんですね。実力の世界に。

修業は何年ほどされたんですか?

今でも修行中ですよ。
「一人前」と言っても、何をもって「一人前」なのかが分からなくて。私はまだまだ一人前になっていないと自分で思っています。
美味しいものができたからといって、そこで満足していたらダメでして。「もっと美味しくするためにはどうすれば良いのか」ということを考えられるのが職人さんですよ。
若い頃は「父を追い越す」という気持ちで頑張ったんですけどね、どうもダメでした。私のレベルが上がったときには、父のレベルも上がっているんですよ。結局父に追いついたのは、父が現役を引退したときでした。

お父様から職人魂を引き継がれたんですね。

先輩から学んで、そして次は若い子に伝える。そうして和菓子の技術は伝承されてきたんですよ。それが最近途絶えかけていて、私はそこに危機感を感じています。
和菓子職人の中には、お年をめされていて弟子をとる余裕がない方もいるんです。うちも余裕はないですけど、弟子をとっています。

職人をしていて良かったと感じることは何ですか?

小学生の娘の担任から「ぜひ、生徒に和菓子の話をしてください!」と声をかけられて、学年全員の前で2時間も講演をしたんですよ。
茶道で用いられる上生菓子の紹介や、バーナーで炙った栗きんとんを試食してもらいました。そしたら生徒さんが、「和菓子はほとんど食べたことがなかったけど、好きになった!」って言ってくれてね。すごく嬉しかったです。

和菓子の普及に尽力されているんですね。ホームページでも和菓子の情報を発信されていますよね?

そうですね。実は、ホームページは自分で作ってるんですよ。
インターネットが一般的でない頃からホームページをやっていますが、当時は和菓子屋のホームページはほとんどなくて。なので、「日本一の和菓子屋ホームページをつくってやる!」と意気込んでいました。けど、後から気づいたんですよ。「当時、和菓子を食べる世代は、誰もインターネットを使っていない」と 笑
今でこそ皆さんインターネットを使ってますけどね。

それでは、逸品を紹介してください。

「茂ちぎく(もちぎく)」という、求肥のお餅が入った最中です。

商品名の由来は何ですか?

昔は、今と違って丸い菊の形をしていて「望菊(もちぎく)」という名前だったんですよ。その名残りとして、今でも「きく」が残っています。

丸い菊の形から、細長い形にしたのには何か理由があるんですか?

今から40年前、テレビで宣伝していたんです。マツイ棒で有名な松居一代さんにモデルとして出てもらって。
座布団に座り、着物姿で最中を食べてもらいましたが、口の周りに皮や餡がひっついてしまったんですよ。それを見た私の父が「これはいかん」ということで、食べやすい細長い形に変えました。最近では、色々な和菓子屋さんがこの形で出されていますけどね。

革命ですね!素材にもこだわっているのですか?

自家製のつぶ餡を使うことにこだわっています。餡を自分で焚かずに、餡子屋さんから仕入れる和菓子屋もたくさんあるんですけどね。

餡子屋から買うのはどうしてなんでしょうか?

「餡焚き」をある程度身につけるまで10年かかりますからね。レシピもなく、何に使うかで固さや甘さを加減しないといけないから難しいんですよ。
方法だけでしたら1年あれば覚えられますが、それから先は師匠ではなく、小豆に聞かないといけません。小豆の美味しさを100%引き出すためには腕がいるんですよ。

ありがとうございました。最後にお客様に一言お願いします。

夙川にある店舗では常時10種類ほど、年間では100種類以上の上生菓子を用意しています。和菓子職人として最高の技術を要求される上生菓子を、ぜひ皆さまに召し上がって頂きたいです。

飛び込みで取材のお願いに行った私の前に最中を1つ置き、「食べてから決めてください。うちの最中が取材するレベルにあるかを」と一言。職人としての自信を感じました。
工房を見学したのですが、奥様とお弟子さんを含めた空間が「仕事場」ではなく「家族」のような温かいものだったのが印象的でした。
店舗は夙川駅近くにあり、40年前から変わらないレトロな雰囲気が人気です。ぜひ足を運んでみてください。

PENGY編集部

茂ちぎく

価格:1個 196円

店舗情報

店名:菓一條栄久堂吉宗

住所:兵庫県西宮市羽衣町7-26

ホームページ:http://wagashi.gr.jp/