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印象ではなく記憶に残せ!香りへのこだわりが生み出した「酒粕と米粉のフィナンシェ」(兵庫県西宮市)

今回は、兵庫県の西宮市にある洋菓子屋、パティスリー ジャンティーユの末廣シェフにお話をうかがいました。料理の専攻を変えることになった出来事や、フィナンシェ開発が難航した理由について教えてくれました。

掲載日:2017-06-05

インタビューに答えてくれた方
パティスリー ジャンティーユ / オーナーシェフ 末廣靖通さん
1988年に大阪あべの辻調理師専門学校卒業。同年宝塚ホテルに入社し、2003年に製菓長(シェフ)に就任。
その後、大阪新阪急ホテル、菓子工房みわあおに五月台4丁目を経て、2011年にパティスリー ジャンティーユを開店。

パティシエになったきっかけを教えてください。

もともとは板前になりたくて調理師専門学校に行ってたんですよ。親に大反対されたんですけど、「絶対に板前になる!」と反対を押し切って。
それで入学後に和洋中の専攻を決める時期がありまして、当然和食を専攻する気持ちではいたんですけど...。締切り3日前にフレンチの特別講師が来て、デザートプレートにチョコレートで「若き日は、夢を大きくもって進みなさい」と書いてくれたんですよ。そのときに「お菓子って人を感動させることができるんだ!」と思って、気づいたときには洋菓子専攻になっていました 笑
卒業するまでは家族に内緒にしてたんですけど、打ち明けたときには「は!?」と言われましたね。

ご家族もびっくりされたでしょうね 笑 卒業後はどうされたんですか?

小さな個人店で働きたいと思ってたんですけど、挨拶にいったお店のシェフに「若い子は、同期がたくさんいる環境で苦楽を共にする方がいいよ」と言われて、昔勤めていらっしゃった宝塚ホテルを紹介してくれました。面接も通って20年ほど宝塚ホテルで働かせてもらいました。
そして、しばらくして今のお店をオープンしました。

とても順調ですね。

実は、そうでもないんですよ。
独立したのは2011年だったんですけど、その年は東日本大震災が発生した年でした。「世の中が大変なときに、お店を開いてもいいのか」と本当に悩みました。僕も阪神淡路の地震を経験しましたので。
ですけど、考え方を変えるようにしたんですよ。「僕がお菓子をつくることで、みんなに元気を与えよう!」と。そういう気持ちを込めて、お店の名前はフランス語で「優しい」を意味する「ジャンティーユ」にしました。

自分のお店を持つようになって良かったと感じることは何ですか?

ホテルにいた頃は裏方的な役割なのでお客さんと接する機会はほとんどありませんでした。けど、お店を持ってからはお客さんの顔を直接見られるようになりました。それが嬉しかったですね。
顔見知りになった地元のおばあちゃんや子供がちょっとした買い物に来てくれてくれるんですよ。お菓子を通して人と繋がりたいという思いが叶いましたね。

嬉しいですね。それでは、逸品を紹介してください。

「酒粕と米粉のフィナンシェ」という商品で、地元西宮にある酒蔵の酒粕と兵庫県産の米粉を使ってつくりました。まちおこしの一環でつくり始めたこともあり、遠方への手土産としても人気がある商品です。
僕のお菓子は「香り」をテーマにしているんですけど、このお菓子は特に香りにこだわってつくっています。

香りをテーマにしているのには、何か理由があるのですか?

ホテルで働いていたとき、料理長に「印象に残る料理はつくらんでいい、記憶に残る料理をつくるんやぞ」とずっと言われていました。最初はその意味が分からなかったんですけど、ある日料理長に「いい料理をつくったな」と言われたんですよ。思い起こせば、そのときにつくったのは香りを意識したお菓子でしたね。
小さい頃に食べたお菓子を、大人になっても覚えていて欲しい。そういう気持ちから、記憶に残るお菓子づくりを大切にしています。

酒粕と洋菓子というのが意外な組み合わせですが、何か大変なことはなかったのですか?

このフィナンシェ、レシピを開発するのにとても苦労しました。何度つくっても、生地が膨らまないんですよ。

それは困りましたね。どうされたんですか?

「もうできんわ」と思って、途中で放っておいたんですよ。けど、普段つくっているお菓子に没頭する中で「あ!」と思う瞬間がありました。そこで、小麦粉に含まれるグルテンという成分の存在を意識して配合を変えてみたところ、できたんですよ。生地が膨らみました。

ついに完成したんですね!

違うんですよ。周りからは「もうこれでいいじゃない」と言われていたんですけど、僕はそれで終わらなくて。自分の頭の中にある味や香りとは少し違ったので、そのイメージに近づけようと思ってやっていたら、完成するまで半年かかっちゃいました 笑

とても思い入れのある逸品なんですね。それでは最後に、お客様に一言お願いします。

酒粕を使ったフィナンシェですが、小さなお子様でも食べられます。「西宮」がたくさんつまったフィナンシェをどうぞ味わってください。

取材中にも小さな女の子2人が、小銭を握りしめてクッキーを買いに来ていました。子供からしたら手頃とは言えないお値段ですが、それでも美味しいと思って買いに来てくれることの素晴らしさを感じました。
店舗は田畑が残る開けた場所にあり、優しさのあるたくさんのお菓子が迎えてくれます。ぜひ、行ってみてくださいね。

PENGY編集部

酒粕と米粉のフィナンシェ

価格:1個 194円

店舗情報

店名:パティスリー ジャンティーユ

住所:兵庫県西宮市樋ノ口町2-2-5

ホームページ:http://cake-west.com/gentille/